星の王子さまの秘密

                  Le Petit Prince         小さな王子さま
 

☆ 砂漠の秘密


のどが渇いた飛行士は王子さまと水をさがしにでかけます。砂漠はひっそりとしていましたが、砂は月の光で光っていました。

飛行士はいままでなんで砂漠が光っているのかその秘密はわかりませんでしたが、王子さまの言葉でやっとその秘密がわかりました。

「砂漠が美しいのは、どこかに井戸をかくしているからだよ…」

「そうだよ、家でも星でも砂漠でも、その美しいところは、目に見えないのさ」



ぼくは夜が明けるころ、とうとう井戸を発見しました。

「へんだな、みんな用意してある。車も、つるべも、綱も……」

「ほら、この井戸が、目を覚まして歌っているよ……」

「ぼくが汲んであげるよ。きみにはおもすぎるから」

「ぼく、その水がほしいな。のましてくれない?……」
ぼくは王子さまがなにをさがしていたのか、わかりました。




◆村の井戸

さあ、いよいよクライマックスです。
「井戸」の秘密がわかるときです。

王子様と飛行士が井戸を探しにでかける部分です。
ここの部分は特に一言一句を見のがしてはなりません。
飛行士と王子さまの会話はきらめきの会話です。

いままで何回かこの童話を読んできて、いつも釈然としない部分がありました。
それは砂漠の「井戸」の部分です。

それは砂漠で水をさがしもとめるところです。
のどが渇いた飛行士は水を探しに行こうと言います。

王子さまはどうやら、のども渇かないし、おなかもすかない、という特別の体のようでしたが、飛行士が水をほしがっているのでいっしょにいくことにしました。

「水は、心にもいいかもしれないな……」

二人は水をさがしにでかけました。夜明けごろ、とうとう井戸をみつけました。

「ぼくたちがいきついた井戸は、サハラ砂漠にある井戸らしくありませんでした。サハラ砂漠の井戸は、ただの穴が、砂地にほられているだけのものです。
ところでぼくたちの発見した井戸は、村にあるような井戸でした。でもあたりには、村なんかひとつもありません。ぼくは夢を見ている気持ちでした。


いままで、この本を読んだときに飛行士が砂漠で見つけた井戸は、なぜ「村にある井戸」なのか、なんでサハラ砂漠の一般の井戸のように、直接地面に掘った井戸でもよいではないか、といつも釈然としないまま、奥歯に物がはさまったような感じで読んでいましたが、実はこの「井戸」こそ、サン=テグジュペリがこの物語に埋め込んだ、星の王子さまの心であり、「秘密」であったのです。

飛行士はのどが渇いてたまりません。
「水が飲みたい、水が飲みたい」と、ずっと水のことばかりをおもっていました。水がキラキラとして光っていた時、水が歌っていた時の遠い記憶…。
飛行士が思い出したのは、少年の頃住んでいた近くの「村の井戸」でした。同時に、その頃の友達や、家族や、嬉しかったこと、楽しかったことが走馬燈のように思い出されたのです。

「時」とは不思議なものです。
少年の頃の思い出を美しくしてくれます。

サン=テグジュペリ自身も、自分の飛行機が砂漠に不時着したことがあり、生死の境をさまよったことがあるのです。その時、何を求めて人はさまよい歩くのか、さまざまに考えたはずです。そして、「幸せ」がどういうものか、「いのち」とはどういうものか、「愛」とはどういうものか。そして人生で、自分は何を失い、何を得たか、と考えたはずです。

そういったなかで、自分が楽しく、光り輝いていた時代、少年の時にこそ幸せの原型があったと気づいたのです。

彼は「井戸」を発見したのです。

同時に、自分だけでなく、すべての人々や、すべての存在にも、同じく「井戸」があることがわかり、存在自体が、いのち自体が喜びであることに気づいたのです。

これは王子さまが、飛行士にヒツジの入った箱の絵を描いてもらったときと同じことが、ここにかかれているのです。

王子さまが、ずっと見ていたら、見えてきた「ヒツジの箱」のなかに「気に入ったヒツジ」が見えたように、、飛行士が一晩中歩き続けて見つけた「砂漠」のなかに「村の井戸」を発見したという同じことが書かれているのです。

そのためには、見つめ続けること、探し続けることが大切なのです。

子供の世界は、驚きと喜びに満ちています。

しかし、子供の世界だけだはありません、喜びの世界は周囲に充ち満ちているのです。

そうした愛の想いに囲まれて私たちは今、生きているのです。

そうした愛の想いの集積した星であるは故に、地球は青くかがやくのです。

これは例えようのない美しさです。

        

この井戸は「村の井戸」でなければなりません。
喜びとともにあった、少年時代の井戸でなければなりません。
サハラ砂漠の井戸ではないのです。

サン=テグジュペリは、星の王子さまの主題の「大事なものは目に見えない」という言葉を、単なる美しい言葉だけではなく、物語の構成自体に埋め込み、飛行士と王子さまに砂漠を一晩中歩かせ、捜させて、夜明けに「村の井戸」を見つけさせたのです。

この「大事なものは目に見えない」という主旋律は各章で色々と変化し、この「砂漠の井戸」の章で「村の井戸」の意味が解ったときに、いままでの各章の旋律が大合唱となり、ものそのもの、ことそのことの素晴らしさを歌いあげるのです。

◆ゾウをのんだウワバミ
◆ヒツジの箱
◆キツネとの出会い
◆砂漠の秘密

今までの各章の美しいフレーズが、バックグラウンドミュージックとなり、この「井戸」の章をいっせいに歌いあげます。
この童話は本当に、美しいコーラスをきいているようなところがあります。

これが、わたしが発見した部分です。
他の人も「村の井戸」発見したでしょうか。
もちろん多くの方が発見しているかもしれません。

しかし、本当に大事なことは、早い、遅いではありません。
その井戸が他人の井戸でなく、自分の井戸かどうかということです。
「村の井戸」かどうかということです。


王子さまはいいます。

ぼく、その水がほしいな。飲ましてくれない?……」
ぼくは王子さまがなにをさがしていたのか、わかりました。


王子さまは、のどが渇いていたので水が飲みたかったのではありません。
王子さまは、飛行士が苦労して見つけた「村の井戸」で、滑車がカラカラと唄い、飛行士が力を入れて、「王子さまに飲ませてやりたい」と思った水であったから、ぜひとも飲みたかったのです。

王子さまは飛行士の汲んでくれた「水」であるからこそ、飲みたかったのです。
また、その「水」を汲んだ飛行士も、王子さまがおいしそうに飲むのをみて、いっそうの幸福につつまれたのです。

        

幸せ、喜びを思い出すことが難しい時代になったのかもしれません。
幸せがどういったものか心に描くことが出来なくなったのでしょうか。

幸せはあちこちと探し回って見つけるものではありません。
幸せの原形は、子どもの頃の世界を思い出せばよいのです。
全てが唄い、語りかけ、美しい秘密を持っていた時代。
そこに幸せの原形があったのです。

あちこち探し回ることはなかったのです。
少しも苦労することはなかったのです。
いろんなものが語りかける言葉を、秘密を、心を澄ませて「じーっ」と聞けばよいのです。



全てが語りかけています。
全てに意味があります。
聞こうとしない人には聞こえません。
見つけようとしない人には見えません。



「砂漠がうつくしいのは、どこかに井戸をかくしているから…」のように、人間が素晴らしい存在である理由も、どこかに必ず「愛」を秘めているからに相違ありません。また、地球が青いのも、大宇宙が存在するのも、時が流れるのも、無数の星が光るのも、そこに「愛」があるからに相違ないのです。



しかし、飛行士と理解し合えたのもつかの間、王子さまは大切なものを守るために自分の星に帰ることに決心しました。


「きみは約束をまもらなくちゃ」 


の言葉に飛行士はわかれの時をさとります。

王子さまは飛行士に約束を果たしてくれるようにいいます。

ヒツジの口輪です。

間違って花を食べないようにヒツジの口輪を描いてやる約束をしたのです。
飛行士は口輪を鉛筆で書いて王子さまにわたしました。

王子さまが星に帰るためには、王子さまは自分の体を脱ぎ捨てていかなければなりません。

体を脱ぎ捨ててゆくことは、やはり勇気のいることです。王子さまも恐いのでしょう。
それを思いやった飛行士は、王子さまに声をかけようとしましたが胸がいっぱいになり、声が詰まってしまいました。

「きみは、いろんなことをしようとしているんだ、ぼくの知らない……」

王子さまは飛行士におくりものを一つあげていくことにしました。
それは王子さまの「笑い声」です。

でも王子さまのプレゼントの「笑い声」の星々のほかに、飛行士はヒツジの口輪をとめる革ひもをつけることを忘れてしまったため、「涙」の星々ももらうことになってしまったのです。

王子さまのプレゼントは五億の笑う星と、五億の涙の星の二つになりました。
 
飛行士が王子さまと別れたのはこの場所だそうです。



王子さまは星になったのです。





(あなたの「小さな花」はどんな花ですか。)

(実はあなたの「花」は、本当はとっても大きく、どんなに美しい花か、そしてどんなにかけがえのない、この宇宙でいちばんの、あなた自身の大切な「花」かに気づいてください。そして、あなた自身が「星の王子さま」であることに気づいてください。)



(「きみは  
約束 をまもらなくちゃ」)






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