ヒツジ

                  Le Petit Prince         小さな王子さま
 

☆ ヒツジの箱




砂漠に落ちた飛行士は一人の少年に出会います。

少年は飛行士に、「ね、ヒツジの絵を描いて…」とせがまれます。
飛行士は小さいころ描いた「ヒツジの絵」の外に、絵を描いたことはありませんでした。

そこで、ゾウを呑み込んだウワバミを外から描いた帽子の絵を描きました。

そうすると少年は
「ゾウを呑んだうわばみは怖いし、ちっぽけな星には置けないし、ぼくはヒツジがほしいんだ。ね、ヒツジの絵を描いて…」
といいました。

しかし描かれたヒツジは病気で死にそうであったり、つのがはえてこわかったり、また、よぼよぼだったりして王子さまは気に入りません。

とうとう、めんどうになった飛行士は、「あんたの気に入るヒツジはそのなかだよ。」と箱を描いてやりました。

そうしたら王子さまはそのヒツジを大変気に入りました。
それが王子さまとの出会いでした。

◆思いと形

この「ヒツジの箱」の章はちょっと難しいですね。
しかし、ここは「村の井戸」の秘密へと誘ってくれる、大変大切な道標なのです。

王子さまは飛行士が具体的に描いたヒツジをどれも気に入りません。
しまいに、面倒になった飛行士が描いた「ヒツジの入った箱」を、王子さまはとても気に入りました。

「あんたの気に入るヒツジはその箱のなかにいるよ。」という飛行士の言葉により、ただの箱でなく、王子さまの気に入ったヒツジが入った特別の箱になったのです。

ヒツジを見ようと「思わないひと」には見えない。
すてきなヒツジがいると「思う人」にしかヒツジは見えない。


禅宗のえらいお坊さんのこんな話があります。

ある禅師がずっとすわって考えていました。
それをみた弟子がいいました。

「先生、何を考えているのですか。」
「個の不思量底を思料する」
(考えようにも考えようのない、「とっかかり」のないことを考えているのだ。)(禅師)
当然お弟子さんは聞きます。
「不思量底如何が思量する」(考えようのないものをどうして考えるのですか)

先生曰く、
「非思量」(ずっと精神を一つのものに集中するのだ)
といったそうです。

人間は考えているうちにわかるときがあります。
「あっ、そういうことか」とその意味、意義がわかるときです。
いわゆる、合点、納得するということです。

この関心を集中して「箱の中のヒツジ」をみていると、「わかる(形を現す)」といったことがあります。

ずーっと見ていると王子さまの好きなヒツジが見えてきますよ。

この「星の王子さま」の「ヒツジ」に当たる部分は、「砂漠の秘密」の「村の井戸」です。
それが見えた、と同時に、音楽がながれます。

星の王子さまの童話はオーケストラを聴いているようなところがあります。
それはいろんなキーワードが美しいフレーズで出来ているからです。

「井戸」の意味が解ると、今までの各キーワードのフレーズがポンと一気に浮かび上がり、その関連性を相互に歌いあげます。

最初は「ウワバミに飲まれたゾウ」から始まり、そしてこの第2章の「ヒツジの箱」へと旋律は流れてゆきます。
主題の旋律は「大事なことは目に見えない」のフレーズです。
この主旋律は「キツネとの出会い」へとかわり、そしてクライマックスの「砂漠の井戸」を迎えます。

この部分の王子さまと飛行士の会話は、きらめきの言葉の大合唱です。

そしてクライマックス中のクライマックス。
それは砂漠の井戸でなく、「村の井戸」。そして飛行士の汲んだ「水」。

最後の終曲は「砂漠の星」です。
主旋律はここでも美しいメロディを奏で、いつまでもこころになりひびきます。



○病気のヒツジ
(飛行士が描いたヒツジ)



○ツノのあるヒツジ
(ちょっと怖いですね〜。)


○ヨボヨボのヒツジ



○王子さまの気に入ったヒツジ


(ほんとですか〜?)


あ、そういえば、ものそのもの、ことそのことを描いている画家がいました。
熊谷守一さんという画家です。
「ことそのこと、ものそのもの」と云った感じの絵です。
ぜひ一度ごらんになってください。



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