エピローグ

                  Le Petit Prince         小さな王子さま
 

☆ エピローグ(終章)

 これが、ぼくにとっては、この世の中で一ばん 美しくって、一ばんかなしい景色です。…(略)

もし、あなたがたが、いつかアフリカの砂漠を旅行なさるようなことがあったら、すぐ、ここだな、とわかるように、この景色をよく見ておいて下さい。そして、もしこのところを、お通りになるようでしたら、お願いですから、おいそぎにならないでください。そしてこの星が、ちょうど、あなたがたの頭の上にくるときを、おまちください。…(略)


◆本当は怖い「星の王子さま」

「本当は怖い昔話」や「本当は怖いグリム童話」という名前で、従来の昔話や、童話の内容が本当は恐い内容であると、一頃評判になりました。

いずれも、過去の恐ろしい歴史の事実を、童話という形で伝承してきたものであり、その裏に隠された真実に気づかねばならない…、といった類の話ばかりであり、まゆつばものの話が多いようでした。

一般的に、星の王子さまの童話はメルヘンチックで、ファンには女性や子供が多く、『本当は怖い…』といったようなことはあり得ない、と思われてますが、実はそうでもないのです。

本当は、とても怖いことを要求しているのです。

自分の星に帰るためには、体は重すぎる…。
体は持って帰れない…。

これは何を云っているんでしょう。


大切なものとの約束・責任を果たすためには、この世的なもの、その最たるものの肉体の命さえ捨てることが必要だといっているみたいですよね。

こんなに厳しい要求があったでしょうか。こんな怖い童話があったでしょうか。


しかし、ご安心下さい。王子さまはの星は体をおいて行かなくてはならないほど遠くの星ではなかったのです。

実はすぐそばにあることが判ったのです。
その場所を見つけるには、必ずその星があると信ずること。
そして「じ〜っと、見続ける」こと。
そうすれば、必ず王子さまの声が聞こえてきます。王子さまの星が見つかります。

最初は、かすかな声ですが、決して聞き過ごしてはいけません。
声は良く聞き取れませんが、必ずそのまま待っていると、ポツリ、ポツリ…と話し始めてくれます。
それは「幸福への帰り道」。それは本当の自分探し。それはバラとの「約束」。


王子さまは、本当の自己実現という「幸福」をおしえてくれているのです。

こどもの頃、全てがキラキラしていた頃、自分も他の人も幸せのなかにいた頃を思いだしてみましょう。

「何々のため」でなく、「誰々のためでなく」、「損得の世界」でなく、そうすることが楽しいから、嬉しいから、といった頃のこと。
遠い遠い子供の頃…。

青い空、フンワリと流れる雲、つららのしずくの光、小川のせせらぎの声、そしてお日さまのぬくもり。夏は、麦わら帽子にランニングシャツ、竿竹片手に魚釣り。
あの頃、なつかしい子供の頃、そのなつかしさの中に幸せを忘れてきたのかも知れません。あの頃、あの無私なる頃の楽しさ、面白さにこそ、幸福への帰り道があったに違いありません。

帰るためには、「勇気」が必要です。
外の声ではなく、内なる王子さまの声を信じる「勇気」が必要です。
そして、信じて行う、「勇気」が必要です。

大人からみれば、勇気はいつも無謀にしか見えません。

しかし、いつの時代も、この勇気こそが自分を変え、他人を変え、世界を変え、運命を変える、「金剛の剣」なのです。

この勇気は、「信じる」という力に支えられているのです。
砂漠の中にきっと「井戸」があると信じる心です。
この「信じる」という透明な強い光のキャンバスのなかにしか、永遠の理想は描けないのです。


まず、長い間その身を覆っていた厚いコートを脱ぎ捨ててみませんか。
ほら、どうです。そんなに寒くないでしょう。
ちょっと冷たい、さわやかな春風が襟元をくすぐっていきます。

「もう、長い冬は終わったよ。」…と。

…でも、寒くなったらどうしよう。冬に逆戻りしたらどうしよう…。


簡単なことです。

寒かったら、自分で季節を変えればいい。
自分自身が春になればよい。
あなた自身が太陽になればよいのです。

あなたが太陽を暖かいと思ったように、緑の風を優しいと思ったように、青い空を美しいと思ったように、あなた自身が太陽となり、風となり、空の青さとなって下さい。

その暖かい気持ちを、素直に傍らの人に投げかけてやってください。
太陽と同じ気持ちを、太陽と同じ言葉を。
恥ずかしくなんかありません。
そのちょっとした勇気が、自分を、他人を、世の中を変えるのです。

あなた自身が太陽になり、他人を暖めようとしたとき、そこは必ず春風がそよぎ、花が咲き、小鳥が歌い始めるのです。

それがあなた自身の本当の姿、あなた自身の自己実現なのです。



さあ、思い出してください。
あなた自身が、この星、地球に落ちてきたときのことを。
あなた自身が、この星に帰ってきたときのことを。

あなたは、とっても大切なことを胸に秘め、この地球に帰ってきたのです。

一切を忘れ去り、また一から始めるこの地上での人生。

その不安と、期待で胸をいっぱいにしてこの地上に生まれてきたのです。
その人生のいずれかでこの約束を思いだし、その約束を必ずや、必ずや果たさんと胸に誓い、この地上に落ちてきたのです。
絶対に忘れてはならない、大事な花を守ろうと、花の愛に応えようと、その想いのみを胸に秘め、小さな小さな胸に秘め、想いの核を種として、この星に帰ってきたのです。


そして、いまそこにあなたがいるのです。


それを思い出した今がちょうど一回り、地球に落ちてきてから一年目。
思い出した所こそ、あなたが地球に落ちてきたところであり、思い出した時こそ地球に落ちてきてからちょうど一回りしたときなのです。

思い返せば、ここから、全ての歩みが始まったのです。

頭の真上には、落ちてきた時の熱い「
想い」の星が、永遠にかわらぬ輝きを放っています。



          「星の王子さま」みっけ!


いま、前回書いた◆砂漠の秘密の章から、奇しくもちょうど一年後に、このエピローグを書いています。

これは事実です。
これを事実と、解った人が「子供の心」をもった人なのです。
これを事実と、気づいた人が私の「ともだち」です。


いま、あなたが真実の「勇気」をふるい、自分の足で自分の人生を歩み出したとき、「村の井戸」を探そうと決意したとき、大切な約束を果たさんと決意したとき、「愛に生きん」と決意したとき、夜空いっぱいの5億の鈴の音と、王子さまの高らかな笑い声が聞こえてくることでしょう。


    「アハハハハハハハハハ…」

          

   …いかがでしたか、この童話の「真実の秘密」がわかりましたでしょうか。



           (…そう、そしてそこにあなたがいるのです。)



     「ああ、いかに感嘆しても感嘆しきれぬものは、わが上なる星の輝きと、
     わが心の内なる道徳」…カント



                     おしまい




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